Webサイト制作の見積りに違いが出る理由とその対策

最終更新日 2020/10/05
Webサイト制作の見積りに違いが出る理由とその対策

同じ条件で見積り依頼をしているのにWeb制作会社によって項目や金額に差がでて比較するのに困ったという担当の方も多いのではないでしょうか? 今回はWeb制作会社によっての見積りに差が出る理由について説明し、その対策をご紹介します。

Webサイト制作の見積りに違いが出る理由とその対策

◆前提条件
作業内容は決定しており、複数のWeb制作会社に同じ作業領域、作業量の見積り依頼をした場合を想定

初めにーWeb制作会社の見積りが決まる基本の考え方

見積りに差異が出る理由を説明する前に、制作会社が何を根拠に見積り作成しているのかという基本の考え方を説明させていただいた方がより理解が深くなると思います。
そこで、初めに多くの制作会社が行っている見積りメカニズムを説明します。

お見積り金額の根拠は技術力(時間単価)×作業工数(時間)

最初に結論からお伝えすると、Web制作の見積りの根拠は、その「技術を利用に対する時間単価」と「実働する作業工数」によって決まります。
本来は、にプロモーション、営業費用や利益部分が加算されますが、単純化するため考慮しません。

Tシャツを製造する場合は原材料費、加工賃、販売管理費といったプロセスに発生する費用と利益を上乗せした金額が見積りとして提示されるイメージを持っていただければと思います。
一方、Web制作は原材料が不要なため、よりシンプルです。

見積り金額に差がでる三つ目の基本要素



先の段落で見積りの根拠が技術力×作業工数(時間)と記載しました。これをもとに考えると見積りに差が出る理由は、「必要技術の認識の差異」または「必要工数の認識の差異」に集約されます。
しかし、制作会社は見積り作成で考慮する要旨は上の二つの要素だけではありません。
その三つ目の要素をご紹介します。

制作会社は受注し制作を完了したと言って必ずしも利益が出るわけではありません。
「当初の設計で与件を満たせなかった」「やり直しが多く予定の工数をオーバーした」など様々な理由で赤字になります。多くの場合は赤字リスクを考慮して見積り計算をしています。これが見積りに差が出る要素三つ目となります。

依頼者としては存在しないリスクを想定された、高い見積りが提出されることを避け、依頼者としても、制作者がリスクを正しく反映された見積りが提出される体制構築と情報提供が必要といえるでしょう。

見積りに差が出る基本パターンのご紹介

先に見積もりに影響を与える三つ要素をご紹介しましたが、次は具体的なWeb制作の見積りで差が2パターンとその対策をご紹介します。

期待している制作物の内容の理解に差異が出るパターン


制作物の認識に差異が出るパターンは以下などに起因することが多いので注意が必要です。
・言語の不一致
・情報不足
・当たり前の基準の差

見積りとして必要な技術や作業工数に影響するでしょう。
具体的なケースをいくつかご紹介します。


言葉の認識相違による作業領域の不一致

事業会社や制作会社間で、同じ単語でも認識している意味が異なり、作業内容に差を生むケースです。
例えば「ワイヤーフレームは提供するのでザイン、コーディングの見積り作成を依頼したい」といった場合、以下のように差異を生みます。

・ワイヤーフレームの精度
必要な項目だけまとまった構成なのか?レイアウト、コピーや写真といった使用素材まで確定されている構成なのか?これは「ワイヤーフレーム」という成果物の認識が異なることにより作業量に差異が出る例です。

その他には「この参考ページのようなページ構築をしてください」といった場合、以下のような部分で差異を生みます

・どこを参考としてとらえるか?

レイアウトなのか?デザインのあしらいや細かな表現なのか?アニメーション表現なのか?
これは「何を参考にすべき」という明示がないため差異が出てしまう例です。

要望の受け取りの不一致を避ける方法

上記のような不一致が起きる理由はいくつかの対応で避けられます。適切に情報提供し、制作会社に正しく理解してもらいましょう。

言語を一致させる

普段何気なく使っている単語でも意味のすり合わせを行いましょう。デザインはどの作業を意味するのか?コーディングはどのような作業を意味するのか?当たり前に感じている言葉ほど認識に差があると見積りに大きな違いを生むので注意が必要です。

作業領分を見せる

言語を一致させるにも通じるところもありますが、どの部分から依頼しているかは今までのやり取りの事例を見せることで、どの領域から依頼しているかわかりやすくなります。以前利用したワイヤーフレームなどの資料を共有するなどし、作業領域を明確認したうえで見積り依頼をしてみましょう。

以上が作業領分の不一致によって見積り金額に差が出るパターンの紹介でした。
量的認識に齟齬があると見積りでは大きな差異になる場合があり、計算し直しになることもあるため、注意して見積り依頼が進められるとよいでしょう。

クオリティに対する認識に差異がある問題


依頼者が要望しているクオリティと制作者が提供予定のクオリティに差があることにより発生します。
見積り根拠としては必要な技術(作業単価)に影響します。。
具体的なケースをいくつかご紹介します。

バナー1枚デザインを依頼する場合、以下の差を生みます。
・訴求したいポイントをとらえて押し出されているか?
・今までの広告出稿の結果を反映したクリエイティブになっているか?
これらの配慮には、相応の経験と技術力が必要です。
バナー1枚のデザインをする場合、ベテランのデザイナーでも、駆け出しのデザイナーでもバナーは出来ますが、成果物のクオリティ差は大きくなります。そこでどの精度のクオリティが求められているかの認識により見積りの金額は大きく変わります。

必要なクオリティの認識差をなくす方法

不一致はいくつかの対応方法で避けられます。適切な情報提供で制作会社に正しく理解してもらいましょう。

目的目標から話をする

「きれい」「かっこよい」といった定性的な評価から話をすると、印象に違いがあり、目標となるクオリティがわかりづらくなります。そこを避けるため「このような指標を達成したい」という客観的に図れる目標達成のため、どのレベルのクオリティが必要といった形ですり合わせをしましょう。

成果物イメージを共有する

達成できる結果をイメージするといっても、まだ主観的な要素が強く残ります。
これに加え、参考となる成果イメージを共有し、どこをクオリティとして評価しているかを伝えすり合わせを行いましょう。
レイアウトの美しさだったり、あしらいの細かさだったり、見落としてしまうような部分のクオリティが必要であれば事例を用いて説明するのが効果的です。

以上が主な制作物の内容の受け取りによって見積り金額に差が出るパターンです。
理由を理解いただき、対策を行うことにより、最終成果物に対する認識の差異をなくしましょう。
次は、成果物に直接的かかわる部分ではない要因で見積りに差異がパターンをご紹介します。

業務の流れやコミュニケーション工数による見積り差


先のパターンは作業領域や作業難易度、クオリティの認識に差がある場合でした。
次は業務の流れやコミュニケーションコストの考え方による見積りに差異がでるケースと対策方法のご紹介です。

制作物そのものには直接影響を与えませんが、見積りに影響を与えるため注意が必要です。

業務フローの違いによる見積り差異

差異が出る理由

制作会社によって業務の流れは異なります。項目の多さや内容により見積りに差異がある場合があります。

例えば、デザイン作成から確認のフローでも以下の差異が発生する場合があります。

・デザインは特定のデバイスでしか行わない。

常にパソコン、タブレット端末、スマートフォン用のデザインを提出し確認をしている制作会社は見積りが高くなり、主要なスマートフォンのみの確認だけで完了する制作会社は安く進行できるケースがあります。

対策

フロー図を作成し認識のすり合わせをしましょう。
どういった中間成果物を作成し、確認を行う。その際の確認ポイントと修正の流れなど事細かな流れのすり合わせが重要です。

コミュニケーションコストの見積り差異

差異が出る理由

Web制作は、制作データだけでなく、サイトを作るプロセスも見積りに含まれます。そのため、リリースまでのコミュニケーションコストの見極めで見積りに差異が出る場合があります。

例えば、日常のデータのやり取り一つでも以下のような差異が発生します。

・オンラインツールが使えず全てメールでデータのやり取りをしなければならない。

この場合は、データの管理が煩雑になったり、スピーディーなやり取りが難しくなったりするためコミュニケーションコストとして高く見積りされる可能性があります。一方でチャットや課題管理ツールなど、制作にあわせたコミュニケーションが可能な場合にはコストを低く見積りしてもらえる可能性があります。

対策

コミュニケーションルールをしっかりと決めましょう。
スタートするにあたって以下のような項目を取り決めたうえで見積り依頼をするのもよいと思います。
連絡ツール(メール、チャット)課題管理ツール、ファイル共有方法、使用するアプリケーションソフト


その他にも、定例会の開催有無やオンラインMTGの可否なども影響を与えます。お互いに無駄な工数が発生しないコミュニケーションルールの設定が重要です。

以上が制作フローやコミュニケーションの考え方の違いにより見積りに差異が出るパターンの説明でした。当たり前と思っている流れのすり合わせや、負荷が少ないコミュニケーションルールの構築が重要です。

最後に番外編として、制作会社の考えるリスクによる見積り差異をご説明します。

制作会社のリスクヘッジによる見積り差異


差異が出る理由

制作会社は受託し制作完了すれば必ず利益が出る業態ではありません。赤字を避けるため様々なリスクを加味して見積りに反映を行います。整合性のある見積りを作成してもらうためにはリスク解除も含め情報共有が必要です。
続いて具体的な例をご紹介します。

例:引継ぎコスト

サイトリニューアルを計画しているが、現行サイトを運営している制作会社、システム開発会社があり、引継ぎも含めたコミュニケーションを取る必要がある場合以下のような差異が発生します。

・各社の担当範囲がどの領域までなのか、各社の責任範囲
・各社ベンダーとのやり取りコスト

プロジェクトを進めるにあたり、社内担当者が深く把握していない場合や、仕様書などのドキュメントが残っていない場合は、引継ぎ元に情報を提供してもらわないといけません。
実際引継ぎ元はドキュメントの作成や、引継ぎのコミュニケーションコストが派生しますのであらかじめ引継ぎ元にかかる工数の確認と予算の確保が必要でしょう。

例:部署間の調整コスト

その他の例として、デザイン確認を複数部署で行う場合は以下のようなリスクがあるため、見積りに影響します。

・依頼側のコンセンサスが取れていないことによる修正ややり直しのリスク
・フィードバックを集約、咀嚼するためのコミュニケーションコスト増大リスク

対策:正しいリスク理解を促す

どちらの例をとっても作業領域や工数拡大のリスクがあるため、高めの見積りになる可能性が高くなります。避けるためには、工数拡大のリスクを明確にすること。

特に以下を明確にし、リスクを正しく理解させることにより、適正な見積りができると思います。

共有しておくべき情報
・プロジェクト全体の座組、各社の権限と責任範囲、連絡の流れ

まとめ

Web制作は、サイトを作るという成果物の提供だけでなく、その制作プロセスも見積りに影響を与えます。そのため、各制作会社に対して、とらえ方に差異が出ない情報共有を心掛けることが重要になってきます。

以上を踏まえ見積り依頼をし比較検討し適切なWeb制作会社を見つけてください。

<関連リンク>
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